3匹の中から生き延びて家族の寵愛を一身に受けたは遠い話。
ルナの出現で、今や存在価値さえあやぶまれる亀次郎。
水槽はルナの水遊び場と化し、とうとう薄暗い部屋へと追い込まれた。
「亀次郎のやつ最近元気あれへんな」半端な冬眠から覚めたんかどうか
何も食べないまま春を迎えたある日、保護者は買い受けた店へと足を運んだ。
「胃をやられてるかもしれまへんな、暖かくして基本食を少しずつ…でだめなら
獣医でしょう」水槽をきれいに洗ってぬるま湯に変えた。晴天の日はベランダでのん
びり遊ばせてやった。好物の干しエビを少しずつ根気よく与えた。
徐々に回復に向かう亀次郎。「クィーッ」「おおっ鳴きやがった」こいつ鳴くんよ。
元気なときは夜中でも何時でもかまわず鳴くんよ「クィーッ」「クィーッ」と。
「ルナの可愛さにかまけて先輩のお前をないがしろにしとった…すまん…許してくれ」
ルナと並んでお空を眺める亀次郎の姿が保護者の心にうかんだ。
「いつか来るぞ…そんな日が」ああ亀次郎…何思う…。