
のっけからいきなり繰り広げられる暴力に圧倒され、打ちのめされそうになるも本を閉じる事が出来ない。子供の頃に養父から受けた虐待の傷跡がなおも主人公を恐れさせるのは”感情のない暴力”暗くただ悲惨な描写に心が痛い。
「このまま何の役にも立たずに、虫けらみたいに死んでゆく自分がだよ。しかも、俺は笑ってるんだ。屑じゃないか。そうだろう?」
人間以下の泥沼に自分を追い込みながらも主人公も同棲する白湯子(さゆこ)も生きたいと渇望している。ラスト。窓から差す月の光を浴びながらの二人の会話にやっと救いのようなものを感じる。芥川賞受賞作品。中村文則 27歳!なんと言う時代だ。