
公演回数残すところ5回となった「忠臣蔵」
なんだかんだ言いながらも終わるもんやね。
休憩が短かかったから楽屋の楽しみもなかったけど
寸暇を惜しんで本読んだことかな…。
池波正太郎「堀部安兵衛」上下。これええよ。安兵衛に対する
池波さんの愛情をひしひしと感じさせてもらえるご本。
まだ前髪もとれていない少年の頃の安兵衛が路上で出会った山伏に
「剣の道を選べば短命に終わる」と宣告される。
安兵衛の目前で割腹して果てた父。その仇を追って出奔する安兵衛。
身を焦がすような女との情愛が破壊された時、安兵衛は?
その男女を追うために祖父の形見の脇差しを売ろうとした京、寺町
大石内蔵助との出会いがあった。運命の歯車は回っとったんやね。
池波さんってすごいね。読みはじめから読者をどーんと安心させて、
父弥次右衛門、大石内蔵助、菅野六郎左衛門、お秀、中津川祐見、
細井広沢、鳥羽又十郎。宿命を背負っているそれぞれの生き様が魅力的。
元禄という時代に生きた青年、堀部安兵衛。
「損得なしに、世を生きて見よどうじゃ」
”市場原理主義”まかり通るこの世に、解説の八尋舜右(やひろしゅんすけ)氏も
「個人の自由、利益の追求に奔るあまり、人間としての誇りも恥も、
そしてなによりも責任感を喪失した現代人に失望し、覚醒をうながしているのだ」
と解く。
何かあるよね。ええ役やらしてもらったと思いながら…おやすみやす。